EUでデジタル市場法(DMA)制定-日本に影響ってあるの?|DMA法を詳しく、わかりやすく解説していきます。

デジタル市場法が欧州連合にて3月24日に最終案を決定しましたね。施行は早ければ2022年内と言われてます。

そもそもデジタル市場法(Digital Markets Act)はどういう法律で規制内容はどうなっているのか、なぜ制定されるに至ったのかを深堀していきたいと思います。

目次

デジタル市場法とは

デジタル市場法とは簡単に説明すると欧州委員会が発端となった立法提案であり、欧州連合(EU)内にて定められた基準を満たした企業に規制が入る法律です。

これだけだと何を言っているのかわからないですよね。

それぞれ分解して説明していきましょう。

欧州委員会とは

欧州委員会には主要な下記権限を有していますので、中枢を担っているといっても問題ない機関でしょう。

欧州委員会の権限・役割
「新規法案を策定する」権限

欧州員会はEUの主要機関の中で唯一この権限を与えられています。

EU各加盟国の市民と専門家の意見を基にEU全体の公益を守ることを目的とした新しい法律を立案します。

「EU各政策の遂行から運営まで大規模な」権限

政策に必要な予算の管理を行えるほどの権限を有しています。

「EU法の遵守」を求める

・また、EUの規則や指令が各加盟国で間違いなく執行されているかの監視、違反の場合はEU司法裁判所に提訴し、「EU法の遵守」を求めることができます。

予算案の提案

EU理事会と欧州会議会と協力を行います。

国際社会におけるEUの代表機関

欧州委員会には各加盟国からEUに権限が移譲された政策分野に関して、EU加盟国全体の代表として交渉する責務があります。

国際的な条約等の交渉の際にも欧州委員会がEU代表として交渉します。

EU加盟国はEUへ政策分野別に権限を委譲できるんですね。

まとめると、欧州委員会の役割はEU内の

「法案提出」「政策の遂行・運営」「EU法遵守を監視」「予算の割り当て」「国際舞台でのEUの代表」

の5つが主な役割となります。

本内容は駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジンを参考にしたので、もっと欧州委員会について深く知りたい方はこちらをご覧になってみてください。

DMA法の規制基準は?

規制対象となるサービス(CPS)は8つほどといわれています。

対象サービス
  1. インターネット交流サイト(SNS)
  2. オンライン検索エンジン
  3. オンライン広告
  4. オンライン仲介サービス(Google Play、steamなど)
  5. ビデオ共有プラットフォーム(ニコニコ動画、Youtubeなど)
  6. コミュニケーションプラットフォーム(Gmail、Yahoo!メールなど)
  7. オペレーティングシステム(windows、GoogleAndroidなど)
  8. クラウドサービス

これら8つのサービスのうちどれか(または複数)を企業を手掛ける企業は注意が必要となりますね。

これらを手掛ける企業でかつ以下の基準どちらかを満たしている場合にはデジタル市場法の規制対象企業となります。

  • EU地域内売上高が75億ユーロ(1兆円)以上
  • 時価総額750億ユーロ(10兆円)以上かつEU地域内で月4500万人以上の利用者及び、1万以上の法人が利用する企業

また、上記基準以外でも市場調査により、参入障壁や保有データの優位性、利用者の囲い込みなどを考慮し、規制対象企業(ゲートキーパー)とすることが可能なので、簡単に言うとグローバルなIT大企業は規制対象になりうる可能性が高いということですね。

今回の法案は中小企業の成長を促すことを目的とされているため、中小企業は原則として規制対象企業(ゲートキーパー)には指定されないようです。

デジタル市場法の規制内容

規制対象企業(ゲートキーパー)に指定された場合、EU内の企業活動で自社提供サービスのデータの取り扱いに関して以下を含む禁止義務が課されることとなります。

  • 規制対象サービス(CPS)の法人ユーザーから得たデータを利用して、競争すること
  • 自社サービスで自社商品に優遇措置を設けること
  • 利用ユーザーが同意した場合以外は、個人情報を別の提供サービスと統合すること

なお以下を含む項目に関しては利用者に許可を得なければならない項目となります。

  • 規制対象サービス(CPS)上にプレインストール(事前導入)されているアプリ等の削除や他社アプリなどのインストールとその利用
  • 法人ユーザーや利用者がプラットフォーム上で生み出したデータを当該法人ユーザーへ提供
  • プラットフォーム外での法人ユーザーと利用者間での契約締結

これらの義務等が課されているため、ゲートキーパーに指定された場合のEU地域内での活動は相当しにくくなることが予想されますね。

規制内容を破ったらどうなるのか

規制内容で違反があった場合、該当企業は全世界年商10%を支払う必要があります。

これは欧州(EU)地域内のみの年商ではなく全世界なのでその額は計り知れない損失(欧州内の売り上げだけでは賄えない)になる可能性もあります。

例えばですが、もしGoogleを傘下に持つAlphabet社が違反したとした場合は、2021年の通算売り上げは約2576億3700万ドル(約30兆9164億4000万円)となっています。違反金は10%のため、257億6370万ドル(約3兆916億4400万円)ほどと推定できます。これは相当痛手ですよね。

さらに違反が繰り返される場合、20%の制裁金が課されます。

そのため、ゲートキーパーに指定された企業はEU地域内での規制を守ることが予想されます。

どこの企業が規制されるのか

現状ゲートキーパーリストは正式には発表されていないものの世界でも名だたるIT企業の「GAFAM」と呼ばれる5企業はほぼこの規制対象になるといわれています。

GAFAMとは
  • Google
  • Amazon
  • Facebook
  • Apple
  • Microsoft

これらの5つのIT企業の頭文字をとって「GAFAM」として一般的に言われています。

これらの企業以外にも規制対象企業となる可能性はありますが、大企業をどこでも入れればいいとなればそれこそEU内の発展に遅れが生じてしまう可能性も捨てきれないので、大企業をどこでも入れるというような対応はあまりしないのではないでしょうか。

日本への影響は

まだ規制リストがはっきりしていないがGAFAMが規制リスト入りすれば、それぞれ規制内容に準じた対応に追われることになります。

EU地域内のみに規制内容に合わせたサービスや提供方法に変更し、ほかの地域(日本等)は今まで通りとするのかは企業やサービスによって変わりそうですが、「一地域のみに適用・ほかの地域は今まで通りとする」という対応は難しいのではないかと想定できます。

そのため、それぞれのスマホやパソコン等の中身(UI)に変更や利便性が多少失われることとなるかもしれませんが、そこの隙をついて新しい企業が台頭してきてくれる可能性に期待もできるかもしれませんね。

まとめ

デジタル市場法とはゲートキーパーと呼ばれるIT業界の大企業に規制を課し、デジタル業界の中小企業の応援をする。

そんな法律ということがわかりましたね。

今後のIT業界の勢力図がこの法案によってどのように変わっていくのかとても気になるところですね。

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